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2017年6月12日月曜日

ミュージカル レ・ミゼラブル2017年公演観劇レポート (劇場写真多め)

東京・日比谷の帝国劇場にてレ・ミゼラブルを観劇してきました。今回は30周年スペシャルウィークの2日目ということで終演後にスペシャルカーテンコールもありました。ただ、書きたいことがありすぎで一度でまとめきれないので、カーテンコールの模様は改めてまとめさせていただきます。



今年は記念すべき日本上演開始30周年。劇場入り口も豪華ですね!胸の高鳴りが止まりません。


平日ですがもちろん満員御礼!平日も含めて全チケットがソールドアウトする演目ってなかなかないですよね。レミゼ人気恐るべし。もう常設の専用劇場作っちゃえばいいのにと思うくらいです。


30周年を彩るに相応しく劇場内も華やか!


このパネル、写真で見ると分かりずらいのですが近くに寄ると歴代キャストの皆様の写真で出来ているんです。


柱にはレミゼ30年の歴史の中から様々な場面のお写真が飾ってありました。


今回はマチネということで14時開演の17時終演。ただし、今週は30周年スペシャルウィーク!二幕の後に15分の休憩をはさみ、特別カーテンコールがありました。カーテンコールを含めると終わったのは18時30分近くになりました。長丁場でもお尻が痛くならない帝劇の椅子最高!

本日の出演者の皆様。



レミゼはダブルキャストを飛び越えてトリプルキャストなのでキャストの組み合わせを考えるのも楽しいですね。
写真だと読みにくいので書き出します。まずはプリンシパルの皆様から。

  • ジャン・バルジャン:福井晶一
  • ジャベール:川口竜也
  • ファンテーヌ:二宮愛
  • エポニーヌ:唯月ふうか
  • マリウス:海宝直人
  • コゼット:清水彩花
  • テナルディエ:橋本じゅん
  • マダム・テナルディエ:谷口ゆうな
  • アンジョルラス:上原理生


2017年度からの新キャストはファンテーヌの二宮愛さん、エポニーヌの唯月ふうかさん、テナルディエの橋本じゅんさんでした。
まずはファンテーヌの二宮さん。声量があって素晴らしい歌でした!ただ、演技はもうちょっとかな。ファンテーヌが天に召されるシーン、ちょっと不自然かなと思ったり。。でも、ミュージカル初挑戦ということですのできっと千秋楽のころにはどんどん良くなっていくのかなと思います!
エポニーヌのふうかちゃんはもうとにかくかわいい!!マリウスに話しかけに行く時の楽しそうな笑顔なんかたまりません。こんなかわいいエポをパシリにするマリウスは大ばか者です笑。ミュージカル女優としては少し小柄には見えましたが、17歳のけなげな少女にぴったりでした。ただ、歌は声が少し細いように思いました。
テナルディエの橋本さん。大いに笑わせていただきました!顔芸と思えるくらいころころ表情が変わります。ジャベールに問い詰められたときのすみませんの表情なんか最高です。やっぱり劇団出身の方だけあって生の舞台での観客の心の掴み方をわかっているなぁと思いました。
前回から続投キャストで印象的だったのはマリウスの海宝さん。少し前に海宝さん主演のノートルダムの鐘を見たばかりだったのでカジモド役とここまで大きく違う演技ができるとは!と驚きました。端正な顔立ちですが、カジモドからマリウスまで幅広い役を演じ分けることができるというのはミュージカル俳優として大きな強みだと思います。

子役、そしてアンサンブルの皆様も役名付きで。


  • ガブローシュ:大西統眞
  • リトル・コゼット:山崎瑠奈
  • リトル・エポニーヌ:禾本珠彩



  • 司教:増原英也
  • 工場長:伊東俊彦
  • バマタモア:宇部洋之
  • グランテール:丹宗立峰
  • フイイ:杉浦奎介
  • コンブフェール:鎌田誠樹
  • クールフェラック:持木悠
  • ジョリ:篠田裕介
  • ブルベール:若松渓太
  • レグール:深堀景介
  • バベ:町田慎之介
  • ブリジョン:山崎一郎
  • クラクスー:石飛幸治
  • モンパルナス:田川景一
  • ファクトリーガール:伊藤美咲
  • 買入屋:般若愛実
  • かつら屋:桑原麻希
  • マダム:本田育代
  • 女(宿屋の女房):三森千愛
  • 女(カフェオーナーの妻):篠崎未伶雅
  • 女(病気の娼婦):高梨さおり
  • 女(鳩):五十嵐志保美
  • 女(あばずれ):華花
  • 女(若い娼婦):松本ほなみ


改めて書き出してみるとアンサンブル、特に男性アンサンブルの方々にもほぼ役名が付いていて驚きました。レミゼラブルはアンサンブルでもソロでワンフレーズ歌う場面も多いです。群衆の一人ではなく一人一人が意味を持っているのですね。

2017年5月14日日曜日

劇団四季版オペラ座の怪人観劇レポート 高井治のファントムはすごいらしい

横浜にあるKAAT 神奈川芸術劇場で劇団四季のミュージカル「オペラ座の怪人」を観てきました。


本日のキャストの皆様



  • オペラ座の怪人:高井治
  • クリスティーヌ・ダーエ:山本紗衣
  • ラウル・シャニュイ子爵:光田健一
  • カルロッタ・ジュディチェルリ:河村彩
  • メグ・ジリー:松尾優
  • マダム・ジリー:佐和由梨
  • ムッシュー・アンドレ:増田守人
  • ムッシュー・フィルマン:青木朗
  • ウバルド・ピアンジ:永井崇多宏
  • ムッシュー・レイエ:松下武
  • ムッシュー・ルフェーブル:鈴木周
  • ジョセフ・ブケー:見付祐一
  • 男性アンサンブル:高橋祐樹、宇都宮千織、佐々木純、村田慶介、山口泰伸、松永隆志、杉浦洸
  • 女性アンサンブル:大岡紋、大中ゆかり、時枝里好、岩城あさみ、松ヶ下晴美、荒巻くるみ、榊山玲子、稲葉菜々、羽田沙織、波多野夢摘、堀内恵、塩入彩香


今回の横浜公演の目玉は何と言っても生オケの復活!ブロードウェイでオペラ座を見たときに厚みのあるオーケストラに感動したことを覚えています。やはりミュージカル、特にオペラの劇中劇のある本作ではオーケストラによる生演奏がふさわしいですね。今回のオーケストラ指揮は平田英夫さんでした。




感想

オペラの怪人は作品自体が好きだから観に行くことを決めました。しかし、特にファントム役は声量が必要な作品。いくらレジェンド級役者とはいえ日本人の声だと物足りないと感じるのかな?と勝手に思っていました。もうね、あの時の自分にスライディング土下座させたいくらいです。
高井さんのファントム、

素晴らしかった!!!

オペラ座だけでなく私が今まで観たミュージカルの中でも1,2を争うくらい感動させられました。嬉しい誤算。せっかく横浜に来たから帰りに中華でも食べようと思っていたのに高井さんの歌で胸がいっぱいになり、食欲吹っ飛んだくらいです。東京、ロンドン、NYと様々な場所で観劇させていただいて、観て良かったなと思う1回に出合うことはよくあります。しかし心に残る1回というのは案外少ないものです。ですが、この高井さんのファントムは私の心に一生残ることを確信しました。オペラ座を見るといつもファントムの切なさに涙するのですが、今回はいつも以上においおい泣きました。もちろんストーリーはばっちり把握していて結末も知っていてもです。そして私の中のファントム=体格の良いおじ様というイメージは高井ファントムにより音を立てて崩れ去りました。ファントムはクリスティーヌを思うあまり脅迫、殺人など落ち着いて考えるととんでもないことをやり人々を恐怖に陥れる。そして怪人と呼ばれイメージだけが独り歩きしてしまう。しかし、本人は一人の女性を思うごく普通の人間なのですよね。だから大柄で見目麗しい俳優さんが演じるよりも小柄な高井さんの方がよりリアルなファントムな気がします。もう2幕最後のラウルとの対決のあたりでは高井さんがファントムの生き写しに見えてきましたからね。

高井さんの人生は少しファントムとリンクしているように思います。彼が劇団四季に入団したのは何と37歳の時。作曲や建築の才能があるのに見た目のせいでその才能が埋もれていたファントムと抜群の歌声を持ちながらなかなか日の目を浴びることのなかった高井治。高井さんの声には何か特別な力があると感じます。そしてその声は彼の今までの苦労した人生があってこそだと生まれるものだと思うのです。


オペラ座の怪人の劇中でファントムが出てくる時間はわずか30分程度と案外短いです。でも、高井さんの声に圧倒され作品自体が彼のファントムに支配されていました。「私、ブロードウェイ派なんで。劇団四季とか見ないんで。」というあなた。高井さんのファントムを聞かないでオペラ座ファンを名乗っちゃいけませんよ!是非一度生で聞いてみてください。


2017年4月22日土曜日

紳士のための愛と殺人の手引き あらすじと感想

東京・日比谷の日生劇場でミュージカル「紳士のための愛と殺人の手引き」(原題:A Gentleman's Guide to Love and Murder )を観てきました。

マチネで観劇。Wキャストのモンティ役、今回は柿澤勇人さん。

2014年にトニー賞でミュージカル最優秀作品賞、演出賞、脚本賞、衣装デザイン賞の4部門を受賞した作品で今回が日本初演。
原作はイギリスの作家ロイ・ホーニマンが1907に執筆した小説「イズリエル・ランクーある犯罪者の自伝」です。
1949年にはこの小説を基に映画「優しい心と冠」【原題:Kind Hearts and Coronets】も制作されました。
映画版は日本未公開ですがスター・ウォーズシリーズ旧三部作でオビ=ワン・ケノービ役を務めたことで有名な名優、アレックス・ギネスが次々に殺される男女8人を1人で演じ分けています。

※以下ネタバレ含む


■主な登場人物

  • モンティ・ナヴァーロ (ウエンツ瑛士 / 柿澤勇人) : 第2代ハイイースト伯爵の甥のひ孫の娘、イザベルの息子。父親はスペイン人。
  • アルバート・ダイスクイス卿 (市村正親) : 第8代ハイイースト伯爵。
  • アスクイス・ダイスクイス・シニア (市村正親) : 銀行家。息子の死後モンティを銀行に雇う。
  • アスクイス・ダイスクイス・ジュニア (市村正親) : アスクイス・ダイスクイス・シニアの放蕩息子。
  • エゼキエル・ダイスクイス (市村正親) : 聖職者。
  • バーソロミュー・ダイスクイス 少佐 (市村正親) : 軍人。
  • ヒヤシンス・ダイスクイス夫人 (市村正親) : 慈善事業家。
  • サロメ・ダイスクイス・パンフリー夫人 (市村正親) : 大根役者。
  • ヘンリー・ダイスクイス (市村正親) : 養蜂が趣味。フィービーの兄。
  • フィービー・ダイスクイス (宮澤エマ) : ヘンリーの妹。後にモンティと結婚する。
  • ミス・シングル (春風ひとみ) : イザベルの死後突然モンティの前に現れた謎の女性。モンティが伯爵家の血筋であることを伝える。
  • シベラ・ホルワード (シルビア・グラブ) : モンティのガールフレンドだが、裕福な男と結婚する。

■あらすじ

最愛の母を亡くし悲しみにくれるモンティ。そこへ一人の年老いた女性が現れる。彼女の名前はミス・シングル。母の古くからの知り合いらしい。彼女はモンティに亡くなった母親は名門ダイスクイス一族の一人であり、モンティもその血を引いていると言う。そう、モンティにも爵位継承権があるというのだ。ただし彼は8番目の継承者。つまり現伯爵を含むダイスクイス家7人が死ななくては伯爵になることはできない。彼は莫大な財産と城を手に入れるためあの手この手でダイスクイス家の人々を手にかけていくのだが・・・




トニー賞作品賞というと社会派の作品が多い中、喜劇は珍しいですね。イギリスが舞台の作品を日本人キャストで演じるということで、少し不安もありましたが杞憂でした。今年の初見ミュージカルの中でも1,2を争う面白さ!私のお気に入りの作品の一つになりました。テンポが良くて最後まで飽きることなく笑いっぱなし!チケット余っているそうですが、それが不思議なくらいです。

気に入ったところをあげるときりがないですが、まずは主演の市村正親さんの演技力。殺されるダイスクイス家のメンバーは全て市村さんお一人で演じられるのですが、1人1人個性があるのです。特に最初に殺される聖職者エゼキエル・ダイスクイス役の時は声も普段の市村さんと違っていて、思わずオペラグラスでお顔を確認したくらいです。(余談ですが彼が教会から落ちるシーンは少しレ・ミゼラブルのジャベールを彷彿とさせる落ち方でクスッとしました。)市村さん、ブロードウェイ版オリジナルキャストのジェファーソン・メイズ(Jefferson Mays)さんに負けず劣らずです!

主演の市村さん以上に舞台に出ずっぱりだったのはモンティ役の柿澤勇人さん。モンティは自分が伯爵になるためにダイスクイス家の人々を次々死に追いやる恐ろしい青年ですが、それなのにチャーミングに見えてしまうのは柿澤さんだからこそでしょう。二人の女性に取り合いになるのも納得です。特に第二幕の「結婚します」(原題はI've decided to marry you)のパートでの慌てふためく動きと表情に笑わされました。

ちなみにこのシーンは2014年トニー賞のパフォーマンスでも使われています。



日本版演出では二つのドアの他に寝室のベッドも使用していました。日生劇場の奥行きある舞台をうまく活用していてブロードウェイ版以上に動きのあるシーンに仕上がっています。ドアを開けたり閉じたりするほかにベッドにダイブしたり、モンティ大忙しです。フィービー役の宮澤エマさんとシベラ役のシルビア・グラブさんの高音も聞きごたえがありました。ご自身のラジオ番組で宮澤さんはこのようなオペラのような高音は初めてとおっしゃっていましたが、そんなことは感じさせない圧巻の歌唱力です。

このシーンの以外にも演出が工夫されていて面白いなと思う部分が多かったです。例えば、壁の絵にアンサンブルの皆さんの顔をあてているところはハリーポッターのようでイギリスらしさを感じました。フィービーとモンティのシーソーのシーンも良いですね。フィービーがシーソーに座って優雅に歌っている反対でモンティーがそれを必死で動かしている様子が二人の階級の違いを示しているように感じました。他にもアイススケートのシーンではただ滑っているだけなのですが、何だか滑り方おかしくて笑いが止まらなかったです。

そしてやはり何といっても音楽が素晴らしいです。2000年代の作品でありながらクラシカルな雰囲気の楽曲で、それが20世紀初頭を舞台にした作品とマッチしていました。掛け合いが多いのも聞いていて楽しいです。作曲家のスティーブン・ルトバクさんは本作がブロードウェイデビューだそうです。今後の作品にも注目していきたいと思います。

2017年1月23日月曜日

Dear Evan Hansen あらすじと感想 ストーリーが秀逸

追記 
作品賞、エヴァン役ベン・プラットさん主演男優賞、ハイジ(エヴァンの母)役レイチェル・ベイ・ジョーンズさん助演女優賞をはじめ、トニー賞5部門獲得しました!おめでとうございます!

NY・ブロードウェイのMusic Box Theatreで新作ミュージカルDear Evan Hansenを観てきました。



2017年1月現在、グレートコメット(正式タイトルはNatasha, Pierre & the Great Comet of 1812)を上演しているImperial Theaterのお隣です。

YouTubeで何曲か聴いて曲が気に入ったのと、gleeに双子のチアリーダー役をしていたローラ・ドレイフスちゃんが主要キャストで出ていると聞いて気になっていた作品。出発前にネットでチケットを抑えておこうと思ったのですが私の滞在期間中は全部売り切れていました。派手な作品じゃないけど、口コミでじわじわ人気が出ているみたいです。ところがダメ元でNY到着後にボックスオフィスで聞いてみたところ、普通に週末分の1階席のチケットがゲットできました。ネットで買えなかったからといってあきらめたら試合終了ですね!


ここで簡単に作品をご紹介。

以下、ネタバレ注意!!


登場人物

  • Evan Hansen (Ben Platt)
    本作の主人公。不安障害の高校生。木から落ちて右腕を骨折したためギブスをつけているが、ギブスには誰からのメッセージも書かれていない。
  • Heidi Hansen (Rachel Bay Jones)
    主人公エヴァンの母。昼は看護師として働き、夜はパラリーガルの学校に通っている。夫(エヴァンの父)とはエヴァンがまだ幼い頃に離婚している。
  • Connor Murphy (Mike Faist)
    友達のいない高校生。ドラッグユーザー。コナーの自殺によりエヴァンの運命が動き始める。
  • Zoe Murphy (Laura Dreyfuss)
    コナーの妹。エヴァンの片思いの相手。
  • Cynthia Murphy (Jennifer Laura Thompson)
    コナーとゾーイの母。専業主婦。
  • Larry Murphy (Michael Park)
    コナーとゾーイの父。家族に良い暮らしをさせるために懸命に働くよき父親。
  • Alana Beck (Kristolyn Lloyd)
    エヴァンのクラスメート。野心家でいつも課外活動のネタになることを探している。
  • Jared Kleinman (Will Roland)
    エヴァンの一番身近なクラスメート。

あらすじ

第1幕


高校最後の年の初日の朝。エヴァンの母、ハイジはエヴァンに声をかけるものの二人の関係はぎこちない。彼女はエヴァンのギブスを見て、学校で新しい友達ができたらギブスに何かメッセージを書いてもらったらどうか提案する。その頃、マーフィー家の食卓ではコナーと妹ゾーイ、父のラリーが口論していた。

学校に着いたエヴァンは学級委員気質のクラスメート、アラナや一番仲の良いジャレッドにギブスに何か書いてもらえないか頼んだ。しかしどちらにも断られてしまう。エヴァンはコナーにも声をかけたものの彼はエヴァンに暴言を浴びせて去ってしまった。ゾーイはエヴァンに兄の無礼を詫びる。ゾーイと話せてちょっと喜ぶエヴァン。

エヴァンはセラピーの課題に出された自分への手紙を書き上げた。その手紙にはゾーイへの思いについても綴られていた。エヴァンが学校のコンピューター室でその手紙を印刷していたところ、またもコナーと遭遇する。今朝と違い落ち着いていたエヴァンはギブスにコメントを書いたが、その後エヴァンの手紙を読んでしまう。ゾーイに関する記述を読み怒ったコナーは手紙を持って立ち去ってしまった。

後日、エヴァンは校長の部屋に呼び出された。行ってみるとそこにはコナーの両親が彼を待っていた。コナーの両親はエヴァンにコナーが数日前に自殺したこと、そしてその時の彼のポケットにはエヴァンからの手紙が入っていたことを伝えた。コナーから友人に関する話を聞いたことのなかった両親はエヴァンがコナーの親しい友人であったと勘違いしていた。エヴァンはコナーの両親からコナーの話を色々聞かせてほしいと頼まれ、後程マーフィー家で話をする約束をしてしまう。

エヴァンは全てを友人のジャレドに話した。そして二人はエヴァンが木から落ちた日にコナーと一緒に居たことにして、架空のメールのやり取りを作成した。

帰宅したエヴァンに母のハイジは大学の奨学金の申し込みをしたか尋ねた。しかし、コナーとの架空の友情話に頭がいっぱいのエヴァンは話を聞いていない。ハイジはコナーが自殺したことについても触れたが、エヴァンは「コナーのことは知らなかったから心配いらない」と返した。彼女はギブスにコナーの名前が書いてあることを指摘したが、これは別のコナーだと誤魔化される。

エヴァンは架空のメールのやり取りを持ってマーフィー家を訪ねた。コナーの母シンシアは息子にも友達がいたことを知って大いに喜び、他のメールも読みたいと言った。父ラリーはメールを読んだことでコナーの死をより一層悔やんだ。妹のゾーイは兄とは距離があったため彼の死を悼むことはしたくないと思っていた。しかし、コナーの持っていた手紙の中の自分に関する記述を見つけると、エヴァンに「兄は自分についてどんなことを言っていたのか教えてほしい」と頼んだ。エヴァンは動揺しつつも、コナーは妹を愛していたがそれをうまく言えなかっただけだと伝える。喜ぶゾーイを見てエヴァンは衝動的に彼女にキスをするが、彼女に部屋から追い出された。

しばらくすると、エヴァンはみんながコナーのことを忘れ始めていることに気付いた。そしてコナーの生きた証を残し、彼のような人を支援するためのプロジェクト”コナープロジェクト”を立ち上げることを決意する。ジャレドとアラナもこのプロジェクトの一員になった。マーフィー家もこのプロジェクトに同意した。

プロジェクトの立ち上げ日に、エヴァンはスピーチをオンラインで配信した。コナーの孤独、そして彼との友情に触れたスピーチは多くの人々の共感を呼び、瞬く間に拡散された。スピーチを見て感動したゾーイはエヴァンにキスをした。

第二幕


エヴァンはコナーと過ごした思い出の果樹園を再建するため、資金調達計画をコナープロジェクトのウェブサイトに掲載した。エヴァンとゾーイ、そして彼女の両親との距離は日を追うごとに縮まっていった。その一方、エヴァンは母ハイジや昔からの友人ジャレドとは距離をおくようになった。

ハイジは配信されたエヴァンのスピーチとコナープロジェクトのことを知った。そして良いことをしているのになぜ教えてくれなかったのかとエヴァンに尋ねた。エヴァンはいつも近くにいないのだから話す機会など無かったと怒り、家を出て行った。

家を出たエヴァンはマーフィー家を訪れた。エヴァンはコナーの父ラリーに自分の父親について語り始めた。父は自分がまだ幼い時に離婚していること、その後再婚し自分や母に会いに来ることはなかったこと、コナーやゾーイは素晴らしい父親を持って羨ましいと思っていることを話した。

エヴァンはゾーイにも自分自身の家族のことを話し始めた。エヴァンは話の中にコナーの話題が無かったことに気づき慌てて何か言おうとしたが、ゾーイはもう無理に兄の話をする必要ないと言った。

エヴァンとジャレドのの距離はますます広がっていった。ジャレドはエヴァンに、コナーの死のおかげで憧れの彼女と仲良くなれて、エヴァンにとっては「人生最高の出来事」だたと皮肉を言った。

ある日、ゾーイはエヴァンと母ハイジを夕食に招待した。夕食の席でシンシアとラリーはエヴァンはまるで自分たちの息子のようだと語った。そして、コナーのための進学資金をエヴァンに譲りたいと申し出た。帰宅後、ハイジはマーフィー家は自分たちの家族ではないとエヴァンに強く言った。エヴァンはそれに反論し、自分はいかに彼らに受け入れられているかを話した。

アラナはエヴァンとコナーのメールのやり取りに矛盾点を見つけた。エヴァンは慌ててジャレドにメールを修正するよう頼むが拒否される。エヴァンは自分はジャレドが必要な時にいつも友人としてそばにいたことを強調したが彼は聞く耳を持たなかった。それどころかこれ以上言ったらメールをねつ造したことを世間にばらすと脅した。

エヴァンは今までの嘘をすべて終わりすることを決意した。するとコナーの亡霊(エヴァンの心の中のコナー?)が現れ、エヴァンの嘘を塗り固めて手に入れた幸せな状況を批判した。そして、真実を言ったら周りの人はみんないなくなり最後は一人になるだろうと言った。

アラナはエヴァンとコナーの友情は嘘であると確信し始めていた。エヴァンは何とか本物の友情であることを証明しようとし、コナーのポケットにあった手紙のコピーを彼女に送ってしまった。アラナは手紙を読んで改めて二人の友情は本物だったと思い込むが、それと同時にエヴァンの許可なくこの手紙のことをネットで配信してしまう。この手紙のことは瞬く間に世間に広まった。

手紙のことを知った人々はコナーの自殺は彼の家族が原因だと思うようになり、マーフィー家の人々に嫌な言葉を浴びせた。エヴァンはついにマーフィー家の3人に今まで語ったコナーとの思い出はすべて嘘であることを打ち明けた。シンシアとゾーイは泣き、ラリーはエヴァンへの嫌悪感を示した。

家に帰るとハイジがエヴァンを待っていた。ネットでコナーとエヴァンの手紙を読み、それがセラピーの課題の手紙だとすぐに気付いたのである。ハイジはエヴァンに謝り、エヴァンの父が家を出て行った日のことを話した。そして、エヴァンが自分を必要としているときは必ずそばにいることを約束した。

1年後。エヴァンは大学の進学資金を貯めるために働いていた。彼はゾーイに会うため、真実を話したあの日以来初めて連絡した。2人は例の果樹園で再会した。エヴァンは自分の嘘を謝り、今は本当のコナーを知るために卒業アルバムに載っていたコナーの好きな本リストを順番に読んでいると話した。そして、自分の嘘を誰にも話さなかったことに心から感謝した。ゾーイはエヴァンを許し、あの時はみんなエヴァンのような存在を必要としていたのだと言った。

エヴァンは改めて自分自身に手紙を書いた。本当の自分自身を受け入れて。

感想


心の古傷をぐいぐいえぐってくる作品です。私もエヴァンのように学生時代に周りとうまく溶け込めなくて孤独を感じていた時期がありました。だから彼の思いが痛いほどよくわかったし、エヴァンが嘘に嘘を重ねていく様子を見てもそれを声高に否定する気持ちにはなりませんでした。この作品に共感してしまう人はきっと多かれ少なかれ彼と同じような経験をしているのだと思います。特にSNSが浸透している現代は多くの人とつながっているように見えて実はより孤独を感じやすくなっているのかな。この作品が多くの人に支持されているのはみんな誰かと繋がっていたくて必死にもがいているからではないでしょうか。

出演者の人数は少なめですが、一人一人の演技が光っていました。その中でも特筆すべきなのはやはり主人公エヴァンを演じたベン・プラットさんです。うまく周りに溶け込めない高校生役がぴったりでした。緊張した時にやたら早口で視線が泳いでるときの演技が特に良いですね。この役はただのイケメン若手俳優さんが演じたら薄っぺらい作品になってしまうと思います。彼が演じるから観ている方も作品に入り込めるんだろうなぁ。(余談ですが、日本でエヴァンを演じるとしたら村井良大さんが合いそうだと妄想してました。村井さんは等身大の役を自然に演じることのできる役者さんなので。)

作品全体のとしてはお芝居のシーンが多く、ダンスも無いです。ミュージカルではありますがどちらかというとストレートプレイに近い印象を受けました。曲調や歌い方もポップス寄りなので、普段あまりミュージカルを観ない方にもおすすめできる作品です。メロディーも耳に残るので私も帰ってからホテルの部屋でwaving through the windows口ずさんでましたからね!

舞台装置はいたってシンプルですが、特徴的なのは舞台に出ているSNSの画面です。(一応開演前に客席から撮った写真を載せます。端の座席だったのでうまく写ってませんが背景幕みたいなやつがSNS画面です。)あらすじを読むと分かる通りSNSがこの作品のキーワードとなっているのですが、舞台上に画面を出すのは面白い発想だなと思いました。アラナが手紙のことを配信した時なんかこの画面が効いてましたね。後ろのSNS画面に投稿がうわぁーっと大量に流れてきて、「やめて!配信しないで!」って思っても一度インターネットの海に流れると制御できない、もう止められないという感じがうまく表現されていました。この一気に広まる感じ、フィクションと分かっていても何だかぞわっとします。また、開幕時にiPhoneのアラーム音が鳴るのですが、最初は演出と思わず本当に誰かの携帯が鳴っているのかと思ってしまいました笑


最後に、ステージドアで出待ちをしていたところゾーイ役のローラ・ドレイフスさん、ラリー役のマイケル・パークさん、ジャレド役のウィル・ローランドさんが出てきてサインと写真撮影に応じてくださいました。これからソワレもあるのにわざわざ出てきてくださってとても嬉しかったです!特にジャレド役のウィル・ローランドさんはめちゃくちゃ気さくで役そのまんまでした。周りの出待ちしている人の中にはもう13回も観たと豪語している人もいて改めて人気の高さを実感しました。今年のトニー賞が楽しみですね。