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2017年6月25日日曜日

ミュージカル「FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇」の登場人物及びブロードウェイ版&日本版キャストをチェック!

2015年のトニー賞で作品賞を受賞したミュージカル「FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇」の日本版上演が決定しましたね!

家族をテーマとした全1幕のミュージカルです。トニー賞のパフォーマンスを見てからずっと気になってた作品。マカオ版も上映されたので日本版はいつ来るかと心待ちにしておりました。そして実は私、日本での上演を待ちきれずブロードウェイ版のスクリプト(台本)を購入し、一足先に読んでしまいました!全77ページの短い作品です。ゲイの父親、そして娘の自分はレズという設定を聞くと、親しみを感じにくいかもしれません。しかし、実際はある家族の話で多くの人に共感できる部分がある普遍的な内容だと思いました。今回はまず、ブロードウェイ版そして日本版の役者さんと合わせて本作の登場人物を紹介します。

※以下、ネタバレ注意!

<登場人物>

アリソン・ベクダル(現在)

43歳の漫画家でレズビアン。本作の原作漫画の著者です。かっこで現在と書いたのは本作には世代違いの3人のアリソンが登場するからです。現在のアリソンは作品のストーリーテラーの役割を果たしています。
ブロードウェイ版で大人のアリソン役を演じたのはベス・マローン(Beth Malone)さん。

この役でトニー賞の主演女優賞にノミネートされました。日本版では宝塚の元男役トップスター、瀬名じゅんさんが演じられる予定です。瀬名さんのベリーショートは間違いなく素敵だろうなぁ!

アリソン・ベクダル(大学生時代)

19歳。大学1年生で親元を離れ寮に住んでいます。
ブロードウェイ版で大学時代のアリソンを演じたのはエミリー・スケッグス(Emily Skeggs)さん。
この役でトニー賞助演女優賞にノミネートされました。大学時代のアリソンの登場シーンはコミカルな場面が多くちょっとしたお笑い担当かなと思います。日本版では大原櫻子さんが演じられる予定です。大原さんって私の中ではアイドル的なかわいい女の子のイメージがあったので、このキャスティングは予想外でした。アリソン役で一皮むけた演技が見れたら嬉しいですね!

アリソン・ベクダル(子ども時代)

9歳くらいのアリソンです。3人きょうだいの真ん中。女性に惹かれていることに気付いた時に歌う、この作品の中を代表する曲の1つ "Ring of Keys" を歌い上げる大事な役です。トニー賞のパフォーマンスが記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
子どもアリソンを演じたシドニー・ルーカス(Sydney Lucas)さんは何と12歳でトニー賞助演女優賞にノミネートされています。天才子役だ!
日本版は2017年6月現在、まだキャストが発表されていません。どんな子が演じるか今からわくわくしています!

ブルース・ベクダル

アリソンの父。葬儀屋兼高校の英語教師。(ちなみに葬儀は英語でfuneral。fun homeのfunはfuneralのfunと楽しいという意味のfunをかけています。だいぶブラック。)部屋の調度品などを整えることに異常なまでの執着心があります。ゲイでブルースという若者と浮気しています。自らトラックに飛び込み自殺します。
ブロードウェイ版で父ブルースを演じたのはマイケル・サーヴェリス(Michael Cerveris)さん。トニー賞にも何度もノミネートされているベテランミュージカル俳優さんです。ミュージカル以外にも多くのドラマや映画に出演されています。

この役でトニー賞主演男優賞を受賞されました。日本版ではレ・ミゼラブルのジャン・バルジャン役でおなじみの吉原光夫さんが演じられる予定です。イメージ合います!

ヘレン・ベクダル

アリソンの母。地元の劇団に所属しています。ブルースの浮気に気付いており、二人の関係はぎくしゃくしています。
ブロードウェイ版で母ヘレンを演じたのはジュディ・クーン(Judy Kuhn)さん。舞台だけでなく、ポカホンタスをはじめとしたディズニー映画の吹き替えでもご活躍されています。

この役でトニー賞助演女優賞にノミネートされました。日本版では紺野まひるさんが演じる予定です。

ロイ

庭仕事のためにブルースに雇われた若者。ブルースの愛人。
※ロイ役は他にも複数の脇役も兼任します。
ブロードウェイ版ではジョエル・ペリッツ(Joel Periz)さんが演じられました。
日本版では上口耕平さんが演じられる予定です。上口さん、ダンス・オブ・ヴァンパイヤでもゲイだったような笑

ジョアン

大学生。大学時代のアリソンの恋人。
ブロードウェイ版ではRoberta Colindrezさんが演じられました。
私は台本読んだだけですがジョアンは絶対かっこいいと確信していましたがレベッカさんのビジュアルが想像通りだ!!日本版は横田美紀さんが演じられる予定です。

クリスチャン・ベクダル

アリソンの兄。10歳くらい。
日本版は2017年6月現在、まだキャストが発表されていません。

ジョン・ベクダル

アリソンの弟。6歳くらい。
日本版は2017年6月現在、まだキャストが発表されていません。

これでキャストは全員です。まだ未発表のアリソン子ども時代を演じる子役さんが気になって仕方がないです。来年の上演が今から楽しみですね!



2017年5月20日土曜日

ミュージカル パレード 詳細なあらすじと感想

東京・池袋にある東京芸術劇場プレイハウスにてミュージカル「パレード」を観てきました。

1999年にトニー賞最優秀作詞作曲賞と最優秀脚本賞を受賞した作品で今年が日本初演です。

<スタッフ>


  • 作:アルフレッド・ウーリー 
  • 作詞・作曲:ジェイソン・ロバート・ブラウン
  • 共同構想およびブロードウェイ版演出:ハロルド・プリンス
  • 日本版演出:森新太郎


<キャスト>


  • 石丸幹二:レオ・フランク(南部にある鉛筆工場の工場長、北部出身のユダヤ人)
  • 堀内敬子:ルシール・フランク(レオの妻、南部出身のユダヤ人) 
  • 武田真治:ブリット・クレイグ(新聞記者)ほか
  • 新納慎也:トム・ワトソン(政治活動家)ほか
  • 安崎求:ニュート・リー(鉛筆工場の夜間警備員、黒人)ほか
  • 未来優希:ミセス・フェイガン(メアリーの母)ほか
  • 小野田龍之介:フランキー・エップス(メアリーの親友)ほか
  • 坂元健児:ジム・コンリー(鉛筆工場の清掃人、黒人)ほか
  • 藤木孝:ローン判事(担当判事)ほか
  • 石川禅:ヒュー・ドーシー(ジョージア州検事)ほか
  • 岡本健一:スレイトン知事(ジョージア州知事)ほか
  • 宮川浩:ルーサー・ロッサー(弁護士)ほか
  • 秋園美緒:サリー・スレイトン(スレイトン知事の妻)ほか
  • 飯野めぐみ:ミニー・マックナイト(フランク家のメイド、黒人)ほか
  • 莉奈:メアリー・フェイガン(殺された鉛筆工場の女工)ほか


※以下ネタバレ含む

<あらすじ>

ー第1幕ー

1913年4月26日アメリカ南部、ジョージア州アトランタ。この日は南軍戦没者追悼記念日のパレードが行われていた。南軍生き残りの老兵たちは誇り高い表情でパレードに参加している。祝祭日ではあるがナショナル鉛筆工場の工場長、レオ・フランクは仕事に追われていた。そのとき、1人の少女がレオのオフィスを訪れる。鉛筆工場の14歳の従業員、メアリー・フェイガンである。彼女は名前と従業員番号をレオに伝え先週分の給料を受け取った。

翌朝、レオの自宅に2人の男が訪ねてきた。彼の務める工場で従業員のメアリー・フェイガンが殺害されたというのだ。その日に工場で勤務していたレオは有無を言わせず拘置所に連行された。妻のルシールが着替えを持って面会にやってきたものの、すぐに帰れると思っているレオはルシールを冷たく突き返す。

同じころ、もう一人の容疑者であるニュート・リーも取り調べを受けていた。彼は鉛筆工場の夜間警備員であり、遺体の第一発見者であった。騒ぎを収めるため早期解決を図る州検事ヒュー・ドーシーは初めはニュートを強く追及した。しかし、途中でこの黒人ではなくもう1人のユダヤ人の方を犯人に仕立てることに決める。

新聞記者のクレイグはこの特ダネをものにした。レオは殺人の罪で起訴されたのだ。様々な人物が彼の事件前後の不審な様子を証言する。メアリーの友人フランクは以前メアリーから「レオに付きまとわれている」と相談されたと話した。売春宿の従業員はレオは常連客であり今度若い娘を連れてくると言われたと話した。鉛筆工場の若い女工たちはレオにオフィスで楽しいことをしようと誘いを受けたと話した。フランク家のメイド、ミニーは南軍戦没者追悼記念日の夜はレオの様子がおかしく、ルシールは仕方なく床で寝ていたと話した。ルシールそれを否定するものの、活動家トム・ワトソンの煽りを受け、南部の聴衆は盛り上がる。そして最後に鉛筆工場の清掃員ジム・コンリーが証言台に立つ。彼はレオのオフィスで殺害されたメアリーを工場の地下まで運んだと話した。この証言が決定打となった。陪審員は全員レオを有罪とした。判事からも有罪の判決が下され、絞首刑に処されることとなった。

ー第2幕ー

パレードから1年後、ルシールは裁判のやり直しを求めてアトランタ州現知事のスレイトン邸を訪ねた。その日はパーティーが行われており、初めはスレイトンはルーシーを邪険に扱った。しかし、彼女の必死で訴える姿にスレイトンの心が動かされ改めて調査することとなった。鉛筆工場の若い女工たちはレオに声を掛けられたことはあるが業務に関してだけであったと訂正した。フランク家のメイドのミニーは州検事のドーシーに証言を強要されたこと話した。清掃員ジム・コンリーは改めて事件当日のことを尋ねると遺体を運んだ話に矛盾点が出てきた。

ルシールの懸命の働きかけによりレオの無実を示す証拠が次々と集まった。夫婦でありながら分かり合えなかった北部出身のレオと南部出身のルシール。皮肉にもこの事件を通じて2人は絆を深めていく。

スレイトンはルシールとの再調査を通じてレオの無実を確信した。しかし、レオを絞首刑にしなければ南部の人々の怒りは収まらないことは間違いない。判決を変更すれば順風満帆だったスレイトン自身のキャリアにも傷が付くだろう。それでも彼は自分自身の正義に従い、レオを絞首刑から終身刑に減刑することを決定した。

レオは服役のため別の刑務所に移された。久しぶりに面会したルシールはレオの首にけががあることに驚く。レオはシャワー中にカミソリで首を切りつけられたが一命はとりとめたことを話した。ルシールは所長や看守に賄賂を渡し、刑務所内でレオとピクニックをした。ほとぼりが冷めればきっと釈放されるに違いないと喜びを分かち合う2人。外が暗くなるころ、次の日曜日にまた来ると言いながらルシールは刑務所を後にした。

その夜、南軍の生き残り兵やメアリーの親友フランキーらがレオを刑務所から拉致した。そしてレオを木の下に連行すると、今からで執行されなかった絞首刑を行うと宣言する。ただしレオが自分が殺したことを謝れば許すと伝えた。しかしレオはメアリー殺害を最後まで否定し、これは神によって与えられた試練であると語った。そして最後に自分の結婚指輪をルシールに渡して欲しいと託した。ついにレオは南部の人間に「処刑」された。
新聞記者のブリットがルシールを訪ねてきた。何者かが彼にルシール宛ての封筒を手渡してきたというのである。ルシールが封を開けると中にはレオの結婚指輪が入っていた。
また南軍戦没者追悼記念日がやってきた。しかし、そこにはレオの姿はない。ルシールは一人パレードを見つめていた。



<感想>

実際にアメリカであった冤罪事件を題材にしており、観終わった後に心にずっしりと重しが残るような内容です。気になる方は「レオ・フランク事件」で検索してみてください。理不尽すぎて、神様はなぜレオにここまでの試練を与えたのかとやるせない気持ちでいっぱいになります。しかし、そんな事件を題材にしたミュージカルにもかかわらず振り返ってみると作品自体にそれほど暗い印象はありません。むしろ流れるように進んでいき、気付いたらエンディングを迎えていました。きっと実際のレオもこんな風に気付いたら殺人犯として裁かれていたのでしょう。そしてこのように感じたのは楽曲の影響が大きいと思います。拍手する間もないくらい間髪入れずに次から次へと曲が流れていくのです。これが主人公レオの意思に反して彼の運命が変わっていく様を描いているようでした。我慢できずに曲が終わったタイミングで拍手を入れている方もちらほらいましたが、今回は劇中の拍手はしない方が作品の流れを切らずに楽しめると思います。曲調も内容に反して明るいものも多いのですが、それがむしろしっくりきました。ネットの世界ではよく「祭り」と呼んだりしますが、一人の人を集団で追い詰めるときって何かお祭りのような明るい感じ、ありますよね。

演出に関しては工夫されている点が多く、ストレートプレイを数多く手掛ける森新太郎さんならではでした。印象に残っているのは冒頭の戦没者追悼記念パレードのシーンで大量に降ってくるカラフルな紙吹雪。最初はこのパレードの雰囲気を出すためだけに使用するのかと思っていましたが、最後まで舞台上は紙吹雪で埋め尽くされていました。このただの紙吹雪が場面によって雰囲気が大きく変わるのには驚きました。例えばメアリーの遺体を地下室に探しにいくシーン。遺体の入った袋にスポットライトが当たり、影のようになった紙吹雪が少し不気味な様子をうまく表現していました。また、最後のレオとルシールのデュエットでレオがルシールに膝枕をしてもらった状態で歌うのも面白いと思います。横になって歌うなんてミュージカルでは珍しいですよね。ミュージカル中心の演出家さんだとなかなか出てこない発想だと感じました。

キャストの皆さまは一覧を見て分かる通り実力派揃い。特にここ10年以上ミュージカルにご出演されていなかった堀内敬子さんの演技はずっと楽しみにしていました。石丸さんとも息ぴったり、歌声も美しく久しぶりのミュージカルなのか耳を疑うレベルでした。本当にルシールになりきっていたのでしょう、最後のカーテンコールでは涙の跡が頬にくっきりと残っているのが見えました。そしてもう強烈な印象を残したのが州検事ヒュー・ドーシーを演じた石川禅さん。禅さんは本当にカメレオン役者ですよね。観る演目によって全く違う人に見えるんです。今回も憎々しい演技が本当にうまくて嫌いになっちゃいそうでしたよ。

ただし、残念だったことが一つあります。それは音響です。オーケストラと役者さんたちのマイクの音量バランスが悪いせいか坂元健二さんの裁判のシーンなどのアップテンポの曲だと歌詞がほとんど聞き取れませんでした。パレードは歌や踊りを楽しむだけでなく歌詞の内容、セリフの一つ一つを理解しながら見るべき作品です。そのため、歌詞が聞き取れないというのは致命的だと思います。また、一幕の武田真治さんのソロ曲と二幕の岡本健一さんのソロ曲ではマイクのブチっという雑音が聞こえました。こういった特に音に関するトラブルがあると集中して観ていても急に現実に引き戻されてしまうので、細心の注意を払っていただきたいです。

音響に関しては若干不満もありましたが、誰もが一度は観ておくべき素晴らしい作品だったと思います。ただし、内容があまりにも辛いのでリピートして見るというよりはこの一回を咀嚼してきちんと味わいたいです。レオを演じる石丸さんとルシールを演じる堀内さん以外は全員自分の役以外の場面では民衆も演じてもいましたが、どんな人でもレオを追い詰める民衆の立場になりうると思います。トランプ氏が大統領になり、昔から住んでいるアメリカ人が移民を排斥するような風潮もあるこの時代にこそ観るべき作品ですね。ブロードウェイでもリバイバルやってほしいなぁと思います。

2017年4月22日土曜日

紳士のための愛と殺人の手引き あらすじと感想

東京・日比谷の日生劇場でミュージカル「紳士のための愛と殺人の手引き」(原題:A Gentleman's Guide to Love and Murder )を観てきました。

マチネで観劇。Wキャストのモンティ役、今回は柿澤勇人さん。

2014年にトニー賞でミュージカル最優秀作品賞、演出賞、脚本賞、衣装デザイン賞の4部門を受賞した作品で今回が日本初演。
原作はイギリスの作家ロイ・ホーニマンが1907に執筆した小説「イズリエル・ランクーある犯罪者の自伝」です。
1949年にはこの小説を基に映画「優しい心と冠」【原題:Kind Hearts and Coronets】も制作されました。
映画版は日本未公開ですがスター・ウォーズシリーズ旧三部作でオビ=ワン・ケノービ役を務めたことで有名な名優、アレックス・ギネスが次々に殺される男女8人を1人で演じ分けています。

※以下ネタバレ含む


■主な登場人物

  • モンティ・ナヴァーロ (ウエンツ瑛士 / 柿澤勇人) : 第2代ハイイースト伯爵の甥のひ孫の娘、イザベルの息子。父親はスペイン人。
  • アルバート・ダイスクイス卿 (市村正親) : 第8代ハイイースト伯爵。
  • アスクイス・ダイスクイス・シニア (市村正親) : 銀行家。息子の死後モンティを銀行に雇う。
  • アスクイス・ダイスクイス・ジュニア (市村正親) : アスクイス・ダイスクイス・シニアの放蕩息子。
  • エゼキエル・ダイスクイス (市村正親) : 聖職者。
  • バーソロミュー・ダイスクイス 少佐 (市村正親) : 軍人。
  • ヒヤシンス・ダイスクイス夫人 (市村正親) : 慈善事業家。
  • サロメ・ダイスクイス・パンフリー夫人 (市村正親) : 大根役者。
  • ヘンリー・ダイスクイス (市村正親) : 養蜂が趣味。フィービーの兄。
  • フィービー・ダイスクイス (宮澤エマ) : ヘンリーの妹。後にモンティと結婚する。
  • ミス・シングル (春風ひとみ) : イザベルの死後突然モンティの前に現れた謎の女性。モンティが伯爵家の血筋であることを伝える。
  • シベラ・ホルワード (シルビア・グラブ) : モンティのガールフレンドだが、裕福な男と結婚する。

■あらすじ

最愛の母を亡くし悲しみにくれるモンティ。そこへ一人の年老いた女性が現れる。彼女の名前はミス・シングル。母の古くからの知り合いらしい。彼女はモンティに亡くなった母親は名門ダイスクイス一族の一人であり、モンティもその血を引いていると言う。そう、モンティにも爵位継承権があるというのだ。ただし彼は8番目の継承者。つまり現伯爵を含むダイスクイス家7人が死ななくては伯爵になることはできない。彼は莫大な財産と城を手に入れるためあの手この手でダイスクイス家の人々を手にかけていくのだが・・・




トニー賞作品賞というと社会派の作品が多い中、喜劇は珍しいですね。イギリスが舞台の作品を日本人キャストで演じるということで、少し不安もありましたが杞憂でした。今年の初見ミュージカルの中でも1,2を争う面白さ!私のお気に入りの作品の一つになりました。テンポが良くて最後まで飽きることなく笑いっぱなし!チケット余っているそうですが、それが不思議なくらいです。

気に入ったところをあげるときりがないですが、まずは主演の市村正親さんの演技力。殺されるダイスクイス家のメンバーは全て市村さんお一人で演じられるのですが、1人1人個性があるのです。特に最初に殺される聖職者エゼキエル・ダイスクイス役の時は声も普段の市村さんと違っていて、思わずオペラグラスでお顔を確認したくらいです。(余談ですが彼が教会から落ちるシーンは少しレ・ミゼラブルのジャベールを彷彿とさせる落ち方でクスッとしました。)市村さん、ブロードウェイ版オリジナルキャストのジェファーソン・メイズ(Jefferson Mays)さんに負けず劣らずです!

主演の市村さん以上に舞台に出ずっぱりだったのはモンティ役の柿澤勇人さん。モンティは自分が伯爵になるためにダイスクイス家の人々を次々死に追いやる恐ろしい青年ですが、それなのにチャーミングに見えてしまうのは柿澤さんだからこそでしょう。二人の女性に取り合いになるのも納得です。特に第二幕の「結婚します」(原題はI've decided to marry you)のパートでの慌てふためく動きと表情に笑わされました。

ちなみにこのシーンは2014年トニー賞のパフォーマンスでも使われています。



日本版演出では二つのドアの他に寝室のベッドも使用していました。日生劇場の奥行きある舞台をうまく活用していてブロードウェイ版以上に動きのあるシーンに仕上がっています。ドアを開けたり閉じたりするほかにベッドにダイブしたり、モンティ大忙しです。フィービー役の宮澤エマさんとシベラ役のシルビア・グラブさんの高音も聞きごたえがありました。ご自身のラジオ番組で宮澤さんはこのようなオペラのような高音は初めてとおっしゃっていましたが、そんなことは感じさせない圧巻の歌唱力です。

このシーンの以外にも演出が工夫されていて面白いなと思う部分が多かったです。例えば、壁の絵にアンサンブルの皆さんの顔をあてているところはハリーポッターのようでイギリスらしさを感じました。フィービーとモンティのシーソーのシーンも良いですね。フィービーがシーソーに座って優雅に歌っている反対でモンティーがそれを必死で動かしている様子が二人の階級の違いを示しているように感じました。他にもアイススケートのシーンではただ滑っているだけなのですが、何だか滑り方おかしくて笑いが止まらなかったです。

そしてやはり何といっても音楽が素晴らしいです。2000年代の作品でありながらクラシカルな雰囲気の楽曲で、それが20世紀初頭を舞台にした作品とマッチしていました。掛け合いが多いのも聞いていて楽しいです。作曲家のスティーブン・ルトバクさんは本作がブロードウェイデビューだそうです。今後の作品にも注目していきたいと思います。

2017年1月23日月曜日

Dear Evan Hansen あらすじと感想 ストーリーが秀逸

追記 
作品賞、エヴァン役ベン・プラットさん主演男優賞、ハイジ(エヴァンの母)役レイチェル・ベイ・ジョーンズさん助演女優賞をはじめ、トニー賞5部門獲得しました!おめでとうございます!

NY・ブロードウェイのMusic Box Theatreで新作ミュージカルDear Evan Hansenを観てきました。



2017年1月現在、グレートコメット(正式タイトルはNatasha, Pierre & the Great Comet of 1812)を上演しているImperial Theaterのお隣です。

YouTubeで何曲か聴いて曲が気に入ったのと、gleeに双子のチアリーダー役をしていたローラ・ドレイフスちゃんが主要キャストで出ていると聞いて気になっていた作品。出発前にネットでチケットを抑えておこうと思ったのですが私の滞在期間中は全部売り切れていました。派手な作品じゃないけど、口コミでじわじわ人気が出ているみたいです。ところがダメ元でNY到着後にボックスオフィスで聞いてみたところ、普通に週末分の1階席のチケットがゲットできました。ネットで買えなかったからといってあきらめたら試合終了ですね!


ここで簡単に作品をご紹介。

以下、ネタバレ注意!!


登場人物

  • Evan Hansen (Ben Platt)
    本作の主人公。不安障害の高校生。木から落ちて右腕を骨折したためギブスをつけているが、ギブスには誰からのメッセージも書かれていない。
  • Heidi Hansen (Rachel Bay Jones)
    主人公エヴァンの母。昼は看護師として働き、夜はパラリーガルの学校に通っている。夫(エヴァンの父)とはエヴァンがまだ幼い頃に離婚している。
  • Connor Murphy (Mike Faist)
    友達のいない高校生。ドラッグユーザー。コナーの自殺によりエヴァンの運命が動き始める。
  • Zoe Murphy (Laura Dreyfuss)
    コナーの妹。エヴァンの片思いの相手。
  • Cynthia Murphy (Jennifer Laura Thompson)
    コナーとゾーイの母。専業主婦。
  • Larry Murphy (Michael Park)
    コナーとゾーイの父。家族に良い暮らしをさせるために懸命に働くよき父親。
  • Alana Beck (Kristolyn Lloyd)
    エヴァンのクラスメート。野心家でいつも課外活動のネタになることを探している。
  • Jared Kleinman (Will Roland)
    エヴァンの一番身近なクラスメート。

あらすじ

第1幕


高校最後の年の初日の朝。エヴァンの母、ハイジはエヴァンに声をかけるものの二人の関係はぎこちない。彼女はエヴァンのギブスを見て、学校で新しい友達ができたらギブスに何かメッセージを書いてもらったらどうか提案する。その頃、マーフィー家の食卓ではコナーと妹ゾーイ、父のラリーが口論していた。

学校に着いたエヴァンは学級委員気質のクラスメート、アラナや一番仲の良いジャレッドにギブスに何か書いてもらえないか頼んだ。しかしどちらにも断られてしまう。エヴァンはコナーにも声をかけたものの彼はエヴァンに暴言を浴びせて去ってしまった。ゾーイはエヴァンに兄の無礼を詫びる。ゾーイと話せてちょっと喜ぶエヴァン。

エヴァンはセラピーの課題に出された自分への手紙を書き上げた。その手紙にはゾーイへの思いについても綴られていた。エヴァンが学校のコンピューター室でその手紙を印刷していたところ、またもコナーと遭遇する。今朝と違い落ち着いていたエヴァンはギブスにコメントを書いたが、その後エヴァンの手紙を読んでしまう。ゾーイに関する記述を読み怒ったコナーは手紙を持って立ち去ってしまった。

後日、エヴァンは校長の部屋に呼び出された。行ってみるとそこにはコナーの両親が彼を待っていた。コナーの両親はエヴァンにコナーが数日前に自殺したこと、そしてその時の彼のポケットにはエヴァンからの手紙が入っていたことを伝えた。コナーから友人に関する話を聞いたことのなかった両親はエヴァンがコナーの親しい友人であったと勘違いしていた。エヴァンはコナーの両親からコナーの話を色々聞かせてほしいと頼まれ、後程マーフィー家で話をする約束をしてしまう。

エヴァンは全てを友人のジャレドに話した。そして二人はエヴァンが木から落ちた日にコナーと一緒に居たことにして、架空のメールのやり取りを作成した。

帰宅したエヴァンに母のハイジは大学の奨学金の申し込みをしたか尋ねた。しかし、コナーとの架空の友情話に頭がいっぱいのエヴァンは話を聞いていない。ハイジはコナーが自殺したことについても触れたが、エヴァンは「コナーのことは知らなかったから心配いらない」と返した。彼女はギブスにコナーの名前が書いてあることを指摘したが、これは別のコナーだと誤魔化される。

エヴァンは架空のメールのやり取りを持ってマーフィー家を訪ねた。コナーの母シンシアは息子にも友達がいたことを知って大いに喜び、他のメールも読みたいと言った。父ラリーはメールを読んだことでコナーの死をより一層悔やんだ。妹のゾーイは兄とは距離があったため彼の死を悼むことはしたくないと思っていた。しかし、コナーの持っていた手紙の中の自分に関する記述を見つけると、エヴァンに「兄は自分についてどんなことを言っていたのか教えてほしい」と頼んだ。エヴァンは動揺しつつも、コナーは妹を愛していたがそれをうまく言えなかっただけだと伝える。喜ぶゾーイを見てエヴァンは衝動的に彼女にキスをするが、彼女に部屋から追い出された。

しばらくすると、エヴァンはみんながコナーのことを忘れ始めていることに気付いた。そしてコナーの生きた証を残し、彼のような人を支援するためのプロジェクト”コナープロジェクト”を立ち上げることを決意する。ジャレドとアラナもこのプロジェクトの一員になった。マーフィー家もこのプロジェクトに同意した。

プロジェクトの立ち上げ日に、エヴァンはスピーチをオンラインで配信した。コナーの孤独、そして彼との友情に触れたスピーチは多くの人々の共感を呼び、瞬く間に拡散された。スピーチを見て感動したゾーイはエヴァンにキスをした。

第二幕


エヴァンはコナーと過ごした思い出の果樹園を再建するため、資金調達計画をコナープロジェクトのウェブサイトに掲載した。エヴァンとゾーイ、そして彼女の両親との距離は日を追うごとに縮まっていった。その一方、エヴァンは母ハイジや昔からの友人ジャレドとは距離をおくようになった。

ハイジは配信されたエヴァンのスピーチとコナープロジェクトのことを知った。そして良いことをしているのになぜ教えてくれなかったのかとエヴァンに尋ねた。エヴァンはいつも近くにいないのだから話す機会など無かったと怒り、家を出て行った。

家を出たエヴァンはマーフィー家を訪れた。エヴァンはコナーの父ラリーに自分の父親について語り始めた。父は自分がまだ幼い時に離婚していること、その後再婚し自分や母に会いに来ることはなかったこと、コナーやゾーイは素晴らしい父親を持って羨ましいと思っていることを話した。

エヴァンはゾーイにも自分自身の家族のことを話し始めた。エヴァンは話の中にコナーの話題が無かったことに気づき慌てて何か言おうとしたが、ゾーイはもう無理に兄の話をする必要ないと言った。

エヴァンとジャレドのの距離はますます広がっていった。ジャレドはエヴァンに、コナーの死のおかげで憧れの彼女と仲良くなれて、エヴァンにとっては「人生最高の出来事」だたと皮肉を言った。

ある日、ゾーイはエヴァンと母ハイジを夕食に招待した。夕食の席でシンシアとラリーはエヴァンはまるで自分たちの息子のようだと語った。そして、コナーのための進学資金をエヴァンに譲りたいと申し出た。帰宅後、ハイジはマーフィー家は自分たちの家族ではないとエヴァンに強く言った。エヴァンはそれに反論し、自分はいかに彼らに受け入れられているかを話した。

アラナはエヴァンとコナーのメールのやり取りに矛盾点を見つけた。エヴァンは慌ててジャレドにメールを修正するよう頼むが拒否される。エヴァンは自分はジャレドが必要な時にいつも友人としてそばにいたことを強調したが彼は聞く耳を持たなかった。それどころかこれ以上言ったらメールをねつ造したことを世間にばらすと脅した。

エヴァンは今までの嘘をすべて終わりすることを決意した。するとコナーの亡霊(エヴァンの心の中のコナー?)が現れ、エヴァンの嘘を塗り固めて手に入れた幸せな状況を批判した。そして、真実を言ったら周りの人はみんないなくなり最後は一人になるだろうと言った。

アラナはエヴァンとコナーの友情は嘘であると確信し始めていた。エヴァンは何とか本物の友情であることを証明しようとし、コナーのポケットにあった手紙のコピーを彼女に送ってしまった。アラナは手紙を読んで改めて二人の友情は本物だったと思い込むが、それと同時にエヴァンの許可なくこの手紙のことをネットで配信してしまう。この手紙のことは瞬く間に世間に広まった。

手紙のことを知った人々はコナーの自殺は彼の家族が原因だと思うようになり、マーフィー家の人々に嫌な言葉を浴びせた。エヴァンはついにマーフィー家の3人に今まで語ったコナーとの思い出はすべて嘘であることを打ち明けた。シンシアとゾーイは泣き、ラリーはエヴァンへの嫌悪感を示した。

家に帰るとハイジがエヴァンを待っていた。ネットでコナーとエヴァンの手紙を読み、それがセラピーの課題の手紙だとすぐに気付いたのである。ハイジはエヴァンに謝り、エヴァンの父が家を出て行った日のことを話した。そして、エヴァンが自分を必要としているときは必ずそばにいることを約束した。

1年後。エヴァンは大学の進学資金を貯めるために働いていた。彼はゾーイに会うため、真実を話したあの日以来初めて連絡した。2人は例の果樹園で再会した。エヴァンは自分の嘘を謝り、今は本当のコナーを知るために卒業アルバムに載っていたコナーの好きな本リストを順番に読んでいると話した。そして、自分の嘘を誰にも話さなかったことに心から感謝した。ゾーイはエヴァンを許し、あの時はみんなエヴァンのような存在を必要としていたのだと言った。

エヴァンは改めて自分自身に手紙を書いた。本当の自分自身を受け入れて。

感想


心の古傷をぐいぐいえぐってくる作品です。私もエヴァンのように学生時代に周りとうまく溶け込めなくて孤独を感じていた時期がありました。だから彼の思いが痛いほどよくわかったし、エヴァンが嘘に嘘を重ねていく様子を見てもそれを声高に否定する気持ちにはなりませんでした。この作品に共感してしまう人はきっと多かれ少なかれ彼と同じような経験をしているのだと思います。特にSNSが浸透している現代は多くの人とつながっているように見えて実はより孤独を感じやすくなっているのかな。この作品が多くの人に支持されているのはみんな誰かと繋がっていたくて必死にもがいているからではないでしょうか。

出演者の人数は少なめですが、一人一人の演技が光っていました。その中でも特筆すべきなのはやはり主人公エヴァンを演じたベン・プラットさんです。うまく周りに溶け込めない高校生役がぴったりでした。緊張した時にやたら早口で視線が泳いでるときの演技が特に良いですね。この役はただのイケメン若手俳優さんが演じたら薄っぺらい作品になってしまうと思います。彼が演じるから観ている方も作品に入り込めるんだろうなぁ。(余談ですが、日本でエヴァンを演じるとしたら村井良大さんが合いそうだと妄想してました。村井さんは等身大の役を自然に演じることのできる役者さんなので。)

作品全体のとしてはお芝居のシーンが多く、ダンスも無いです。ミュージカルではありますがどちらかというとストレートプレイに近い印象を受けました。曲調や歌い方もポップス寄りなので、普段あまりミュージカルを観ない方にもおすすめできる作品です。メロディーも耳に残るので私も帰ってからホテルの部屋でwaving through the windows口ずさんでましたからね!

舞台装置はいたってシンプルですが、特徴的なのは舞台に出ているSNSの画面です。(一応開演前に客席から撮った写真を載せます。端の座席だったのでうまく写ってませんが背景幕みたいなやつがSNS画面です。)あらすじを読むと分かる通りSNSがこの作品のキーワードとなっているのですが、舞台上に画面を出すのは面白い発想だなと思いました。アラナが手紙のことを配信した時なんかこの画面が効いてましたね。後ろのSNS画面に投稿がうわぁーっと大量に流れてきて、「やめて!配信しないで!」って思っても一度インターネットの海に流れると制御できない、もう止められないという感じがうまく表現されていました。この一気に広まる感じ、フィクションと分かっていても何だかぞわっとします。また、開幕時にiPhoneのアラーム音が鳴るのですが、最初は演出と思わず本当に誰かの携帯が鳴っているのかと思ってしまいました笑


最後に、ステージドアで出待ちをしていたところゾーイ役のローラ・ドレイフスさん、ラリー役のマイケル・パークさん、ジャレド役のウィル・ローランドさんが出てきてサインと写真撮影に応じてくださいました。これからソワレもあるのにわざわざ出てきてくださってとても嬉しかったです!特にジャレド役のウィル・ローランドさんはめちゃくちゃ気さくで役そのまんまでした。周りの出待ちしている人の中にはもう13回も観たと豪語している人もいて改めて人気の高さを実感しました。今年のトニー賞が楽しみですね。