マチネで観劇。Wキャストのモンティ役、今回は柿澤勇人さん。
2014年にトニー賞でミュージカル最優秀作品賞、演出賞、脚本賞、衣装デザイン賞の4部門を受賞した作品で今回が日本初演。
原作はイギリスの作家ロイ・ホーニマンが1907に執筆した小説「イズリエル・ランクーある犯罪者の自伝」です。
1949年にはこの小説を基に映画「優しい心と冠」【原題:Kind Hearts and Coronets】も制作されました。
映画版は日本未公開ですがスター・ウォーズシリーズ旧三部作でオビ=ワン・ケノービ役を務めたことで有名な名優、アレックス・ギネスが次々に殺される男女8人を1人で演じ分けています。
※以下ネタバレ含む
■主な登場人物
- モンティ・ナヴァーロ (ウエンツ瑛士 / 柿澤勇人) : 第2代ハイイースト伯爵の甥のひ孫の娘、イザベルの息子。父親はスペイン人。
- アルバート・ダイスクイス卿 (市村正親) : 第8代ハイイースト伯爵。
- アスクイス・ダイスクイス・シニア (市村正親) : 銀行家。息子の死後モンティを銀行に雇う。
- アスクイス・ダイスクイス・ジュニア (市村正親) : アスクイス・ダイスクイス・シニアの放蕩息子。
- エゼキエル・ダイスクイス (市村正親) : 聖職者。
- バーソロミュー・ダイスクイス 少佐 (市村正親) : 軍人。
- ヒヤシンス・ダイスクイス夫人 (市村正親) : 慈善事業家。
- サロメ・ダイスクイス・パンフリー夫人 (市村正親) : 大根役者。
- ヘンリー・ダイスクイス (市村正親) : 養蜂が趣味。フィービーの兄。
- フィービー・ダイスクイス (宮澤エマ) : ヘンリーの妹。後にモンティと結婚する。
- ミス・シングル (春風ひとみ) : イザベルの死後突然モンティの前に現れた謎の女性。モンティが伯爵家の血筋であることを伝える。
- シベラ・ホルワード (シルビア・グラブ) : モンティのガールフレンドだが、裕福な男と結婚する。
■あらすじ
最愛の母を亡くし悲しみにくれるモンティ。そこへ一人の年老いた女性が現れる。彼女の名前はミス・シングル。母の古くからの知り合いらしい。彼女はモンティに亡くなった母親は名門ダイスクイス一族の一人であり、モンティもその血を引いていると言う。そう、モンティにも爵位継承権があるというのだ。ただし彼は8番目の継承者。つまり現伯爵を含むダイスクイス家7人が死ななくては伯爵になることはできない。彼は莫大な財産と城を手に入れるためあの手この手でダイスクイス家の人々を手にかけていくのだが・・・トニー賞作品賞というと社会派の作品が多い中、喜劇は珍しいですね。イギリスが舞台の作品を日本人キャストで演じるということで、少し不安もありましたが杞憂でした。今年の初見ミュージカルの中でも1,2を争う面白さ!私のお気に入りの作品の一つになりました。テンポが良くて最後まで飽きることなく笑いっぱなし!チケット余っているそうですが、それが不思議なくらいです。
気に入ったところをあげるときりがないですが、まずは主演の市村正親さんの演技力。殺されるダイスクイス家のメンバーは全て市村さんお一人で演じられるのですが、1人1人個性があるのです。特に最初に殺される聖職者エゼキエル・ダイスクイス役の時は声も普段の市村さんと違っていて、思わずオペラグラスでお顔を確認したくらいです。(余談ですが彼が教会から落ちるシーンは少しレ・ミゼラブルのジャベールを彷彿とさせる落ち方でクスッとしました。)市村さん、ブロードウェイ版オリジナルキャストのジェファーソン・メイズ(Jefferson Mays)さんに負けず劣らずです!
主演の市村さん以上に舞台に出ずっぱりだったのはモンティ役の柿澤勇人さん。モンティは自分が伯爵になるためにダイスクイス家の人々を次々死に追いやる恐ろしい青年ですが、それなのにチャーミングに見えてしまうのは柿澤さんだからこそでしょう。二人の女性に取り合いになるのも納得です。特に第二幕の「結婚します」(原題はI've decided to marry you)のパートでの慌てふためく動きと表情に笑わされました。
ちなみにこのシーンは2014年トニー賞のパフォーマンスでも使われています。
日本版演出では二つのドアの他に寝室のベッドも使用していました。日生劇場の奥行きある舞台をうまく活用していてブロードウェイ版以上に動きのあるシーンに仕上がっています。ドアを開けたり閉じたりするほかにベッドにダイブしたり、モンティ大忙しです。フィービー役の宮澤エマさんとシベラ役のシルビア・グラブさんの高音も聞きごたえがありました。ご自身のラジオ番組で宮澤さんはこのようなオペラのような高音は初めてとおっしゃっていましたが、そんなことは感じさせない圧巻の歌唱力です。
このシーンの以外にも演出が工夫されていて面白いなと思う部分が多かったです。例えば、壁の絵にアンサンブルの皆さんの顔をあてているところはハリーポッターのようでイギリスらしさを感じました。フィービーとモンティのシーソーのシーンも良いですね。フィービーがシーソーに座って優雅に歌っている反対でモンティーがそれを必死で動かしている様子が二人の階級の違いを示しているように感じました。他にもアイススケートのシーンではただ滑っているだけなのですが、何だか滑り方おかしくて笑いが止まらなかったです。
そしてやはり何といっても音楽が素晴らしいです。2000年代の作品でありながらクラシカルな雰囲気の楽曲で、それが20世紀初頭を舞台にした作品とマッチしていました。掛け合いが多いのも聞いていて楽しいです。作曲家のスティーブン・ルトバクさんは本作がブロードウェイデビューだそうです。今後の作品にも注目していきたいと思います。
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